NIKONIKODIY
K001 | オアシスの優しさ | アクリル | 6×6 | お一人様購入は一回、一点まで
K001 | オアシスの優しさ | アクリル | 6×6 | お一人様購入は一回、一点まで
お一人様一点のみ
### 在庫補充!オアシスの優しさ お一人様一点のみ
放課後の廊下を歩いていると、掲示板に奇妙な告知が貼られているのを見つけた。
**「今日限定!『オアシスの優しさ』お一人様一点のみ配布中!」**
「何これ?」私は思わず声に出してしまった。見慣れないタイトルに興味を引かれた私は、告知の矢印が指す方向へ進んでいく。たどり着いたのは中庭に設置された小さなテーブル。その上には、色とりどりの美しいビーズが整然と並べられていた。
「これが『オアシスの優しさ』……?」
透明感のあるビーズはそれぞれ形も大きさも微妙に違い、中に刻まれた英文字がきらきらと光っている。その隣で椅子に腰掛けていたのは、生徒会の風祭涼(かざまつり りょう)先輩だった。クールでミステリアスな彼が、いつもと違う柔らかい笑顔で私を見上げる。
「選ぶなら慎重にな。」
「これって、どういうものなんですか?」
「『オアシスの優しさ』は、一人に一つだけ許された癒しのビーズだ。今日だけ特別に配ってる。でも、お一人様一点のみ。欲張るとビーズが力を失う。」
その言葉に半信半疑になりながらも、私は目を凝らしてビーズを見つめる。それぞれのビーズには英文字が一文字だけ刻まれている。「A」「R」「S」……どれも意味ありげで、手に取るたびにどれが自分に合うのか迷ってしまう。
「これ、どうやって選べばいいんですか?」
「自分が一番惹かれるものを取ればいい。正解はないから。」
彼のアドバイスを胸に、私は最終的に「H」と刻まれた淡いピンク色のビーズを選んだ。小さくて、光を受けるたびにほんのりと輝く。
「それを手に握ってみて。」
言われた通りビーズをそっと握りしめると、不思議な感覚が手のひらから伝わってきた。まるで水の波紋が広がるように心の中が温かくなり、いつの間にか抱えていたモヤモヤがすっと消えていくのを感じた。
「これ、本当にすごい……」私は目を見開きながら呟いた。「でも、このビーズに刻まれた『H』って、何の意味なんですか?」
「それは持ち主によって違う。君にとって『H』が何を意味するのか、自分で考えてみるといい。」
先輩はそれ以上何も言わず、次の生徒を促した。振り返ると、すでに多くの生徒が列を作ってビーズを受け取っている。みんな真剣に選んで、一つだけ大切そうに手にしている。
**お一人様一点のみ。**
そのルールが何を意味するのか、私にも少しずつわかってきた気がした。欲張らず、一つだけを大事にする。それが「オアシスの優しさ」からの教えなのだろう。
その日以来、あの特別なビーズのことを見た人は誰もいない。でも私は、ポケットの中でいつも「H」のビーズを握りしめながら、少しだけ前向きになれた気がする。